第1 設問1
1 Eが提起した遺言①の無効確認を求める訴えは確認の利益を欠き不適法である。
2 確認の訴えは対象が論理的に無限定であるから、すべてに対して本案判決をしていては、被告の応訴の煩と訴訟不経済を招く。そこで、確認の利益を要求することで、紛争解決のため必要性、実効性のあるものに限るべきである。具体的には方法選択の適否、対象選択の適否、即時確定の利益の観点から考慮して判断する。
3 過去の一時点での法律関係の確認は、現在に至るまでに法律関係が変化していたら、かかる確認の訴えは無意味になってしまうため、対象選択の適否を欠き、原則として確認の利益は認められない。
もっとも、昭和47年判決は遺言の無効を確認するという形式的に過去の法律行為の確認を求める訴えであっても、当事者間の紛争の直接的な対象である基本法律行為たる遺言の無効の当否を判断することによって、紛争の抜本的解決を図ることができるとして、確認の利益を認めている。昭和47年判決の事案は、30余りの土地及び数棟の建物を含む全財産を一人の相続人に遺贈するという内容の遺言の有効性が問題となっているところ、このような場合は、現在の個別的法律関係に還元するよりも遺言の有効、無効につき既判力を生じさせる方が紛争を一回的に解決できるからである。
4 本件において、遺言①は土地甲1という一つの財産をBに遺贈する旨の内容である。昭和47年判決の事案とは異なり共有持分権に基づく確認訴訟を提起すれば足り、遺言の有効性判断が判決理由中の判断となることによって紛争の一回的解決が困難になるとはいえない。そのため、複数の財産が一人に遺贈されることを内容とする遺言が問題となった昭和47年判決の射程は本件には及ばないといえる。
5 よって、上記訴えは対象選択の適否を欠き、確認の利益を欠くため不適法である。
第2 設問2
1 訴訟②の被告適格は受遺者Cにあり、遺言執行者Dには被告適格がないため、訴えが却下される。
2 当事者適格とは当事者として訴訟追意向を市本案判決を受けうる資格をいい誰に対して訴訟追行を認め、本案判決をするのが必要かつ有意義かという観点から判断される。
3 民法1012条1項は、遺言執行者につき、「遺言の内容を実現するため・・・遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」と規定しているうえ、昭和51年判決も遺言執行者を被告として遺言の無効を主張し相続財産について自己が持分権を有することの確認の訴えを提起することができると述べているから、遺言執行者は「遺言の執行」に関して、相続人に代わって行為すべき者とおいえる(民法1013条1項)。そして、遺言の失効後は遺言執行者はかかる権利義務を失い、その効果は相続人に帰属すると解される。
4 本件で遺言執行者たるDは平成25年3月1日に既に甲2につき所有権移転登記手続の申請をして、登記を経由している。訴訟②は上記所有権移転登記の抹消登記手続請求を求める訴えであるところ、これは遺言執行後の話であるから、遺言執行者Dにはかkる行為をする権利義務はない。
そのため、Dに訴訟追行を認め本案判決をするのが必要かつ有意義とは言えず、Dは当事者適格を欠く。
よってDは被告適格を欠くから訴えが却下される。
第3 設問3
1 小問(1)
(1)本件で主張すべき請求原因は①Jもと所有、②JF間の売買契約(民法555条)、③F死亡(882条)、④GはFの子(887条1項)である。
(2)①について、GもHも土地乙をJがもともと所有していた点は争いがないから、これを主張すべきである。②について、FがJから土地乙を買い受けたことを主張すべきである。これによって、Fが土地乙の所有権を取得するため、F死亡による相続開始によってFの子であるGが所有権を取得すると主張する(③④)。
2 小問(2)
裁判所は前訴における当事者G、Hの主張を前提とすると、上記請求原因を判決の基礎とすることができるか。
(1)弁論主義とは、判決の基礎となる証拠の収集、提出を当事者の権能かつ責務とする建前をいい、裁判所は当事者が主張しない事実を判決の基礎とすることはできない。
ここでいう事実とは、主要事実である権利の発生消滅変更に直接かかわる事実をいう。なぜなら、間接事実、補助事実は証拠の機能を有するゆえ自由心証主義を妥当させるべきであり、裁判所の判断を弁論主義によって拘束すべきでないからである。
そして弁論主義は当事者と裁判所の役割分担を規律するものであるから、自己が主張していない事実であっても、人々の当事者が主張している主要事実は判決の基礎とすることができる。
(2)本件で、確かに、Gは前訴で請求原因②のJF間の売買について主張していないが、相手方当事者Hがかかる事実を主張sいている。上記事実はGの乙土地所有権の発生を基礎づける主要事実であるから、裁判所は②の事実について判決の基礎とできる。請求原因①、③、④の事実についてはGから主張s荒れているため、これも問題ない。
(3)よって、裁判所は上記請求原因を判決の基礎とすることができる。
第4 設問4
1 前訴の本訴請求で土地乙はGの所有権でないことが確定しているところ、Hは後訴に前訴で生じた既判力が及ぶためGの主張は認められないとする。
(1)既判力とは前訴判決の後訴に対する通用力ないし拘束力をいう。審理の弾力化の観点から、「主文に包含するもの」(114条1項)すなわち訴訟物たる権利法律関係の存否の判断に生じる。
本件では、Gの土地乙の所有権の不存在につき既判力が生じている。
(2)そして、前訴訟物と後訴訴訟物が同一・先決・矛盾関係にある場合には前訴で生じた既判力が後訴に及び、後訴で前訴既判力と矛盾する主張をすることはできない(消極的作用)。
後訴訴訟物はGの共有持ち分権に基づく所有権移転登記請求権であるところ、前訴訴訟物のGの所有権と先決又は矛盾関係に当たるため、既判力が及び、Gは後訴でかかる主張をすることができないようにも思える。所有権と持分権の関係はさらっと説明しましょう
2 もっとも、信義則により例外的にかかる主張が許されないか。
(1)平成10年判決は、信義則の適用により遮断効の拡張を認めているところ、その根拠を紛争の蒸し返しにより被告の紛争は解決された期待に反し二重の応訴の負担を強いることになるためと説明している。そのため遮断効の縮小においても特段の事情があれば信義則の適用が認められるべきである。どういう場合に信義則の適用により既判力が縮小されるのか規範を立てましょう。
(2)本件では、前訴で土地乙がFの遺産であることが確定している。それにも関わらずHは贈与により単独所有権を取得したとの主張をしてきたためGが後訴を提起するに至っている。本件ではむしろ紛争の解決が前訴でなされなかったためにしかたなくGが後訴を提起したとみるべきであってGに負担がある。
Gとしてやるべきことはやっているといい得るのか、というあたりはどうですかね
そして、理由中の判断ではあるものの、Fの所有ということが前訴で確定している以上Fの子Gが共有持ち分権の主張をすることは前訴と矛盾する主張とはいえない。
また、Hは自身の所有権の不存在を既判力で確定しているのにGの所有権の不存在のみ持ち出して既判力による遮断を使用とする態度は矛盾挙動であり、Gに信義則の適用を見射止めるべき特段の事情があるといえる。
(3)よって、信義則により遮断効の縮小が認められる。
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